黒酢のふるさと
南九州の風土が黒酢を育てた
黒酢は日本では200年ほど前からつくられてきました。鹿児島県福山町は、中国から黒酢が最初に伝えられた土地として、現在でも黒酢づくりが盛んに行われている場所です。
なぜ、外国からやってきた黒酢が福山地方に根付いたのか、不思議ですよね。それは、この土地の風土がとっても黒酢造りに適していたからなんです。
- 温暖な気候と適度な湿度・・・・福山地方の年間の平均気温は18℃以上ととても高く、湿度も全国的にみて高い水準で維持されています。この独特の気候が黒酢づくりに、ぴったりとマッチしたのです。
- 玄米が豊富だったこと・・・・この地域でとれる良質な玄米が黒酢の原料となりました。
- 自然の湧水や地下水に恵まれていたこと・・・・酢づくりには、きれいな水が欠かせません。
こうした条件が、長年にわたって福山地方で黒酢をはぐくんできたのです。
壺を用いた黒酢の伝統的醸造法
福山地方の黒酢造りの方法は、“酢畑”と呼ばれる野天に並べられた壺の中で醸造を行うという手法です。
このとき、発酵にちょうど良い気温と、太陽を浴びることができる環境、壺に住みついている微生物の3つが欠かせません。
発酵に壺が使われるのは、朝鮮出兵のときに日本に連れられてきた朝鮮の陶工達による「薩摩焼」の壺がもとです。大きな港があり、交通の要衝だった福山地方では、この薩摩焼の壺が手に入りやすい状況にあったことも、黒酢づくりの成功につながりました。
こうした背景のもとで、福山地方で壺による黒酢づくりが始まると、その優れた品質が評判を呼び、たくさんの黒酢の醸造所が建てられていきました。
1年以上の歳月をかけて・・・黒酢ができるまで
黒酢の原料は、地元の「玄米」・「麹」・「地下水」の3つです。出来上がるまでの工程を追ってみましょう。
「玄米の仕込み」
- 蒸した玄米を12kgずつ(1壷の必要量)に分けます。
- 分けられた玄米を35℃前後に冷却した後、酢畑へ運びます。
「麹づくり」
- 蒸した玄米に「種麹」を振るい、麹むしろに入れて3日~4日待ちます。
- サラサラとなった麹に、胞子を付けます。胞子がついた麹を「老麹(ひねこうじ)」と呼びます。「老麹」は後の行程の「振り麹」の時に使用されます。胞子を付けるのは、水に浮かすためで、黒酢の独特の風味を付けます。
「黒酢の仕込み」
- 種麹を入れたカメ壷に蒸しあがった玄米を入れていきます。
- その上に「仕込み水」を入れます。地元の地下水を利用します。
- 仕込み水の上より「振り麹」の作業を行います。質の良い「老麹」をまんべんなく振ります。これは雑菌の進入を防ぐためです。
- 蓋をします。この状態で自然発酵させるために「1年間」静置します。
- 一つ、一つのカメ壷を攪拌させながら、出来具合を確認してきます。黒酢の育ち具合を見極めるのは長年の職人業です。
「熟成」
- 仕込み後「6ヶ月」。随時、酸度、糖度、Ph値、異味、異臭がないかを確認します。
- 大坪に移し、さらに「6ヶ月以上」寝かせて熟成させます。これによって、味の均一化を図ります。
- 工場に運び、絞機で絞った後、ろ過します。そして、約80℃で殺菌し、再びろ過した後、出荷します。
まさに、気が遠くなるような過程ですよね~。屋外で1年以上の年月をかけて、ようやく黒酢が出来上がるとは・・・。その間の職人さんたちの苦労を想像すると、頭が下がります。